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放射線は身近なもの?キッズワークショップは大人にとっても目からウロコ

こんにちは。浦野です。

六本木ヒルズの夏休みプログラム、MIRAI SUMMER CAMPをご存じですか?
これは、森ビルが毎年開催しているキッズワークショップの枠組みの中で、昨年から始まった夏休みのキッズ向けの先端テクノロジー系ワークショッププログラムです。私は、ロフトワークとして昨年と今年、このプログラムの企画運営にかかわりました。特に今年は、ロフトワークがシェアオフィスしているボランティア集団Safecastのワークショップに当日までメンバーとしてかかわり、個人的にも発見がたくさんあったので、皆さんにも共有したいと思います。

世界最先端のテクノロジーを体験できるキッズワークショップ

MIRAI SUMMER CAMPは、森ビルとMIT Media Labの共同研究がきっかけとなり、MIT Media Lab出身者や共同研究をしている企業など、世界最先端のテクノロジーや研究を体験できるプログラムが詰まっています。どのプログラムも、昨年・今年ともにキャンセル待ちの人気でした。お子さんのいる方は、来年ぜひ!

全体を通してどのプログラムも大人にとってもすごく勉強になるし面白いです。というのも、こどもに向けてわかりやすく伝えようとすると、本質を理解していないとできないんですよね。表面的な言葉や、もっともらしい言葉、業界用語では誤魔化せない。私自身、今回子どもたちを前にして、いかにいつも定型表現を使ってしまっているかを実感しました(笑)

世界中から集まったプロのエンジニア集団、Safecast

まずSafecastとはどんなひとたちかというと、2011年3月11日に起きた福島第一原発事故の1週間後に世界中から集まったエンジニアにより結成されたボランティア集団です。GPS機能の付いたガイガーカウンター(放射線測量機)を作り、日本中の人がそれを持ち歩くことで常にオンライン上で放射線の状況がわかるシステムを作り、今では世界中に活動が広がっています。立ち上げ時のサポーターとしてMIT Media Labの所長、伊藤譲一さんが参加。ロフトワークは活動開始直後からオフィスシェアをしていて、家族的な仲間です。
 
Safecastのワークショップ、今年は、「手作りのセンサーで、見えない科学の世界を感じよう!」というタイトルで、9~13歳の30人の子どもたちを10人ずつのグループに分け、それぞれ、「ガイガーカウンターを作る島」、「放射線を体験する島」、「市民活動について学び、自分なら何をしたいか考える島」の3つを45分ずつ体験するという、結構ハードなプログラム。今回はこれを午前午後で2セット開催しました。
 
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会場の様子。

ガイガーカウンターを作ってみよう!

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まずガイガーカウンターをつくるチームをおしえるのは、Safecastの代表のPieter。オランダ出身で、普段は大手銀行のCTOです。いつもすごい情熱とチャーミングさで5年間チームを引っ張っています。
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子どもたちでも簡単にガイガーカウンターを作れるように、メンバーによって特別キットが開発されましたよ。
 
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ガイガーカウンターを作るなんてはじめての体験に、子どもたちも興味深々。
 
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難しい電子工作の作業に頑張って取り組んでいました。真剣。

自ら動き、活動できる市民になろう!

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こちらの島では「市民科学とは、市民活動とは何か?君たちなら何がしたい?」という、ちょっと難しいワークをしています。Safecastの活動も市民活動のひとつ。情報をオープンに共有して、それぞれが新たなつながりを作りながら有機的に活動することで、大きな力を生み出しています。
 
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担当のAzbyは、普段はSafecastの対外コミュニケーションを担っていますが、本業は金沢工業大学未来デザイン研究所の所長で建築家。ニューオリンズ出身で、趣味は落語を演じることらしい。Safecastのメンバーは本当に多彩で面白いです。
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大人でも難しいテーマにも真剣に取り組み、議論する子どもたち。えらい!

放射線は身近に溢れているということを知ろう!

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そしてこちらは、さまざまなサンプルを実際に測りながら、放射線ってなんだろう?を体験する島。担当するのはKalinとJoe。Kalinはブルガリア出身で、今はセキュリティ会社の技術部門リーダー。Joeはアメリカ出身でセンサーのエンジニア。(ちなみに、オフィスではいつも器用なJoeに椅子やら電気やらを修理してもらっていて、いつも夜中に人知れず作業してくれるので、朝出勤するといつも「あ、今日も妖精が来てくれた」という感覚を覚えます。)
 
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こぶしに放射線を発するチップを握り、 どちらに入ってるか子どもたちに問題を出すJoe。
 
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放射線といっても、世の中には自然放射線という、自然界に普通にある放射線があります。たとえば、御影石やレンガは、自然放射線を発しているし、人間も体の中にカリウム40という放射線を持っていて、それがないと生きていけないんだそうです。一言で放射線といっても一概に「あぶない」と早合点してしまってはいけない。ちゃんと性質を知って対処法を知らなきゃね、という話をしていました。
 
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放射線を測る機械といっても種類はさまざま。
 

生活の中にある放射線。「あぶない」ってなんだろう?

身の回りにある放射線を発するサンプルとして、持ってきてくれたものを一部紹介します。
 
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これは、福島の事故の直後にペイントした板とガラス製のお皿。板は、表側は放射線を浴びたのでいまだにガイガーカウンターを近づけるとチチチチチという大きな音がしますが、裏側は全く反応しません。板のこの厚みだけでこんなに放射線が遮蔽されるものなんですね。お皿はガラスの中にウラニウムが入っていて、UVライトをあてると光るのでわかるらしいです。ただ、含まれるのが少量だからか未だに生産されているらしいとのこと。たしかに、こういうお皿、時々見かける気もします。
 
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空気清浄機のフィルター。福島の事故の後、東京でも絶対何かしら反応が出ているはず!と、Kalinが自宅の色々な場所を機器で調べたものの、何も出てこなかったそうです。不思議に思って空気清浄機のフィルターを測ったところ、セシウムが検知されたのだとか。思わず空気清浄機に向かって「ありがとう!」といったそうです。ちなみにエアコンのフィルターは目が粗いので、埃がたまってフィルター化してない限りキャッチしにくいそうです。
 
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子どもたちだけでなく、保護者のみなさんも興味津々だったのが印象的でした。保護者の方々から多かった質問のひとつが「東京は危険ですか?」でした。それに対してKalinは、こんな風にこたえていました。
「それは様々な状況を総合して自分で判断することが大事ですよね。たとえば壊れた車で雨の中を走るとして、車が壊れてることを知ってるか知らないかは大きな違いだし、その状況を危険か危険でないか判断するのは自分ですよね。ちなみに福島の事故が起きたときに日本から香港に逃げた外国人が結構いたけど、実は香港の自然放射線は事故後の東京の3倍。どっちが安全かはわかりませんが、私はいろいろな状況を踏まえて東京に残ることにしたんです」
 
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放射線って、言葉だけ聞くとなんとなく怖いという印象を持つ人も多そうですが、事実をちゃんと知る努力をすることが、自分ももっと必要だなと、改めて感じたワークショップでした。来年も楽しみです!
 
quiz
最後は確認クイズもやりましたよ。みなさんはいくつわかりますか?
 
浦野 奈美 浦野 奈美

千葉大学卒業後、ロフトワークに入社。コーポレートDiv.で総務・法務をしつつ、マーケティングDiv.ではビジネスイベントの企画運営を担当。またロフトワークのおもてなし担当として、外部とのコラボレーションイベント、パーティーのアレンジを数多く手がける。多様な人が出会うことで化学反応がどんどん起こっていくような、わくわくする場づくりを追求している。>>プロフィール詳細

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