ロフトワークの今を伝えるブログメディア

いつだって「成長する思考態度」でありたい。3ヶ月間の777塾を終えて

ロフトワークの中堅社員、石川真弓です。

7月から約3ヶ月間、毎週水曜日夜に開催されてきた福田敏也さんによる広告私塾777塾に生徒として参加してきて、先日最終日を迎えました。20代半ばがメインの「若手」の中に30代半ばの私が混じって、広告、コミュニケーション、企画を学んできました。

777塾とは:
トリプルセブン・インタラクティブの代表、福田敏也が90年代から始めている広告私塾。ネットの世界にはネットメディアをよく理解したコピーライターが存在しないことに困り果て、いないものは育てるしかないということで第一回がスタート。以降、その内容やカタチを変えながら、現在は、コピーライターという職種に限定することなく、広い職種のヤング(40台含む)を集めて、今時なるコミュニケーションをともに考える枠組みになっています。これまでにたくさんの卒業生が旅立ち、さまざまな業種の現場最前線で活躍しています。
講義内容:約10回の中で、前半は講義を中心に。後期は、グループワークを中心に運営していきます。

2016年の全10回の講義内容はざっくりこんな感じでした。

第1回:自己紹介、チーム分け、前段の講義、課題の発表

全塾生25人程度が、A,B,C,Dの4チームに分かれ、このチームメンバーで最後まで共にし、最終日の企画プレゼンに挑みます。(チーム編成は敏也さんがスキルセットなどを考慮してバランス良く決める)
職種や年代は様々なれど、クリエイティブエージェンシーに勤める2年目〜5年目の若者がボリュームゾーン。
今回の企画プレゼンのお題は「石川県珠洲市を研究し、珠洲市の地域の課題を解決する企画、ビジネスを考える」。
2017年に開催される石川県珠洲市で開催される「奥能登国際芸術祭」のコミュニケーションディレクターを敏也さんが務める関係からも、今年のお題はこのように設定されたのだと思います。
第1回目の講義の後は、みんなで懇親会へ(私は行けなかった)。

第2回:BABY METALから考える。なぜBABY METALは世界に行けたのか

BABYMETAL(ベビーメタル)は、日本の女性3人組メタルダンスユニットで、全米TOP40に入ったり、イギリスのウェンブリーのライブでは1万人を超える動員を果たしたり等、ここまで世界で大ブレイクした日本人アーティストは過去にいません。
これまでのメタルバンドとBABY METALは何が違ったのか?その既存の価値観の差分とは?
BABYMETALの成功は世界市場の文脈理解とそれを基準点にした戦いかたの重要性を教えてくれました。

第3回:視点アスロン

さまざまな「視点」でアイデアを出して出して出し尽くすトレーニング。基準点を変えながら企画の幅を作っていくメソッドが「視点アスロン」です。
2016年の777塾の課題である、「珠洲市の地域の課題を解決する企画」を以下の視点をお題に、ひとつ10分でひたすら考えていきます。

「Youtubeバズ動画企画的に新しい」「特産品開発企画的に新しい」「法整備的に新しい」「メジャー企業ブランドとのコラボ企画的に新しい」「廃校活用企画的に新しい」「土産物企画的に新しい」「レストラン企画的に新しい」

何を基準点にして、差分をどう大きくするのか、どんな基準で、どんな視点で「新しさ」を考えるのか、その多様な角度からの思考がその人の解決の幅を広げることがでいるのです。
ああ、この日は脳が疲れた!

第4回:過去のカンヌライオンズ受賞作をおさらいする

講義メイン。歴代のカンヌライオンズ受賞作を紹介しながら、その時代背景において何が新しかったのか、何が「差分」だったのかを学んでいきます。

2001年 カンヌライオングランプリ「Nike ID」(15年も前からNike IDがあったとは…!)
2002年 BMW film(サイバーライオン)
2003年 Titanium lionsができた。この統合キャンペーンを表彰するカテゴリは前年のBMWがつくったようなもの。
2007年 Nike+ Fuelband
2008年 UNIQLOCK
2010年 インテルの「The Museum of Me」(ソーシャルメディアと連動した企画の勃興)

第5回:中村勇吾と佐藤雅彦、福田にとって分解すべき2つの巨星

敏也さんが独自研究する中村勇吾と佐藤雅彦のクリエイティビティについて聞きました。個人的に、この回が一番マニアックで楽しかったです。
佐藤雅彦も中村勇吾も人の視線を釘付けにする快感のアルゴリズムを武器に戦うクリエイター。人間の根源的快感と向き合うことの価値を深く理解しているクリエーター。

中村勇吾から送られてきた、カナダの実験映像、アニメーション作家であるノーマン・マクラレンのDVDは、
・人間の感覚と向き合うメソッドとしてのアルゴリズム、ルールのクリエイティブ
・その概念が示唆するテクノロジー時代の映像感覚のあり方、映像と向き合う作法
があった。
彼らの制作物には、
・音楽的編集をする:ノンストップでエンドレス、ほぼ無声
・微熱進行をめざす:盛り上がらず、森下がらず。37.2°ぐらいの感覚。
という独自の映像哲学があるそう。
Uniqlo のUのCMや、ピタゴラスイッチ、ドンタコス(ドンタコスったらドンタコス)のCM、スコーン(スコーンスコーンコキャコーン)のCM、サントリーのピコーのCMもそう。音楽的編集、メロディに映像がのる、ルールに基づいた映像。それが、人間の根源的快感をもたらす、というのでした。

第6回:Generative Design

コンピューターがプログラムルールに基づいてイメージを作り整えるデザイン(=Generative Design)について。
・Computational Design(コンピュータが自律的に創造する)
・Algorithmic Design(アルゴリズムによって生み出される)
・Generative Design(自己生成的な)

Generative Designの例:
・10,000 Digital Paintings by Field
・Casa da Musica Identity by Stefan Semester (2007)
・MIT Media Lab CI
・ecotonoha

第7回:体調不良につき欠席…

第8回:なんだっけカルテ

良い基準点、良いコンセプトを考える上で効果的なのは、考えるテーマの「そもそも」に遡るアプローチ。
『○○って何だっけカルテ』は、以下の流れで考える方法。
・その生まれに遡る
・そのデザイン構成要素を分解する
・その進化のプロセスと、その進化の引き金になった時代のニーズを分解する
・その進化の流れに即してリデザインの可能性を考える
歴史を学ぶことで、対象の「オリジン価値(その商品が生まれた理由)」に向き合うことができ、そのオリジン価値が「今の時代」とどう向き合うべきかを考える素地ができる。例えば「切手」。時代ごとの変遷をまとめ、リデザインが行われている。

第9回:チームごとに企画のブラッシュアップ、敏也さんからのフィードバック

第10回:最終プレゼン

私たちCチームは、「SUZU EARTHTECT PROJECT」と題して、世界中で静かなムーブメントとなっている、誰でも参加できる建築「アースバックハウス」を軸にした企画をプレゼンしました。詳細は割愛しますが、この企画が一番優れていたといことで選ばれました。といいつつ4チームの中で、ですが)嬉しかったー!

earthbag

最後に、再び敏也さんの講義で出てきた以下のフレーズ。

固定された思考態度」は根本に「自分をよく見せたい」という欲求があるため、失敗する可能性がある挑戦を避けたがります。障害にぶつかった時のあきらめも早く、努力は実を結ばないと考えがちです。批判に対し、例えそれが有用なものであってもネガティブな意見であればフィードバックを無視してしまい、他人の成功に脅威を感じます。そして自分の能力を出し切ることができず、早い段階で能力の伸びが頭打ちの状態へと移行してしまいます。

一方「成長する思考態度」はまず「学びたい」という欲求から始まるため、挑戦を喜んで受け止め、逆境にぶち当たっても粘り強く堪えます。努力は熟達への通過点と考え、批判から学び、他人の成功からも学んだりインスピレーションを受けたりするという流れ。根本にあるのが「学びたい」という考えのため、全てを雪だるま式に吸収し、高い成功レベルへと到達できるというわけです。

スタンフォード大学の教授 Carol Dweck氏

777塾全10回を通して伝えようとしてくれた「固定された思考態度」と「成長する思考態度」の話。30も半ばになると、うっかり思考が固定されそうな自分に時々出会いますが、ずっと後者でありたいなと強く思ったのでした。

また、今回立場も年齢も関係なく、フラットな関係でチームワークに取り組んだわけですが、だからこそ、共感のとりかた、合意形成のしかた、そしてその中でどうリーダーシップをとるのが(相対的な)正解なのか、年長者ならでは(?)の悩みを抱えながら取り組んでいたのですが、これも良い学びとなりました。

年をとっていくと、ついつい保守的な態度をとりがちになるんだと思いますが、それでも、この学びを糧に、「成長する思考態度」でありつづけるように頑張りたいと思います。

20161027_777_2-2

そして、敏也さんから頂いたとあるメールの一文を勝手に掲載しちゃいます。
そこには、777塾を10年以上やり続ける理由が書かれてました。

彼らが本当に成長するには明日役に立つ企画のメソッドなんかではなく5年先10年先に効いてくる考え方の考え方をどうインプットできるのか。
そこだけはがんばらんといかんと思ってやってます。
どこまでそれが伝わるかわかりませんが。

この言葉で、また敏也さんへのリスペクトが増したのでした。

Mayumi Ishikawa Mayumi Ishikawa

ロフトワークの広報・プランナー。
ロフトワークとFabCafeの広報業務のほか、社内外のコミュニケーション戦略のプランニングと実施、コラボレーション企画などを行う。個人ブログを続けて13年、週4社員の本業の傍ら、ギズモード・ジャパンなどのWebメディアのライターを務める。著書に「HDR写真 魔法のかけ方レシピ」(技術評論社)。 >>プロフィール詳細