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交換しながら企もう!これからの織物のこと

例えば、チンパンジーは別の群れと「モノを交換する」ことができないらしい。

同じ群れであればブドウを分け合えるし、お互いの毛づくろいもできる。でも多くの動物は、別の文化圏を持つ種族と「交換」はできない。「交換」や「交易」こそが、ヒトをヒトたらしめ、文化を醸成してきたと、マット・リドリーは言う。(TED:アイデアがセックスするとき / 書籍:繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史

例えば自分自身に置き換えてみる。友達だと「最近どうなん?」から始まり、最近あった面白い話や、仕事の悩みをシェア。時には困り事を助け合ったり、一緒にハメを外したり。

そんなゆるい繋がりにおける「交換」の中で、ふいに面白い企みを思いつき、自発的に計画を実行した。そんな思い出は多くの人が経験しているはず。

そういうゆるやかな関係性の中で、知恵や課題を交換しながら、織物の可能性を探っていくプロジェクトをはじめました。それが、京都府北部与謝野町の2〜30代の若手織物職人たちが行う「ひらく織」です。このプロジェクトで、お互いの産地を行き来しながら一緒に切磋琢磨できる、他産地の若手織物職人さんたちを絶賛募集!しています。

小さくはじめて、自走してみる

与謝野町は、丹後ちりめんを中心とした織物産業で栄えた町。ですが平成17年→23年の6年間で4割の事業所が廃業。後継者がいない事業所は95%を占めます。(与謝野町織物実態統計調査書 参照)

当然ながら似た問題は全国の織物産地で起こっています。これは、高い専門性や複雑な分業体制、情報の機密性など様々な特長から生じています。 (中小企業基盤整備機構「主要産地繊維産業の現状」参照)

ならば、それぞれの織物産地で起こっていることをオープンにし、「織機の部品が製造中止になったんや」「じゃあうちのところ紹介するで」と課題を補いあったり、「こんな織物織りたいねん」「じゃあうちの織機で実験してみよか」をゆるやかにできる仕組みを作りたいと考えました。

これは与謝野町の若手織物職人さん自身の声から出てきたもの。イベントで疲弊したり、無理な商品開発を誰かに言われてやるのではなく、自分たちで自走する覚悟を決め、その宣言をこの「ひらく織」につめこみました。

 

このプロジェクトの特徴は3つです。

  • どんなことを交換したいのか。具体的な動きにつなげるため、探求したいことを目次(アジェンダ)にして、まとめました。(うまい店の情報なんかもぜひ交換したいと思っています)
  • 全国での交流の様子は職人さんたちがオープンに記事化します。写真がぶれてたり、文章が専門的すぎるかもしれません。でも「生」の情報を、有益に伝わるよう頑張ります。
  • 個人が重要。個人が全力で遊び、全力で深める。努力は夢中に勝てないはず。町おこしや、産業復興といったワードは横において、まずは個人が全力で取り組める気持ちが大事だと思います。

ゆるさと、深さと、たくさんの視点を

「産地交流してるだけで何か生まれるん?」「もっとチームっぽくした方が良いんじゃない?」「ゴール指標を明確に設定すべきでは?」いろんなご指摘、どしどしお寄せください。改善した方がよい課題もあると思います。まずは小さくはじめて、いろんな意見を取り入れながら転がっていきます。

「分かりやすくモノを見たい」そんな声も聞こえてきそうです。確かに職人さんであれば作ってナンボな世界かもしれません。でもそれがいわゆる「織物」なのか、「織機部品」になるのか、「建築内装」のような別の用途へ転化していくカタチをとるのかは分かりません。

プロジェクトは先月から始まったばかりですが、少しずつうねりは見えてきています。第一弾として訪れた西脇:播州織の若手織物職人さんたちとの交流。例えば与謝野と西脇の女性機屋さんがそれぞれブログを書いたり、意気投合してこれから新しい試みを企む様子も書かれています。職人さんの中にはU/Iターンなどで多様なバックグラウンドを持つ方もいるので、従来では考えられなかった機会領域が生まれる可能性も高くなってきています。

ここから北陸や九州南部などの国内産地はもちろん、台湾やヨーロッパなどの海外産地も視野にいれつつ次のアクションを考えていきます。場所ではなく、異素材や異分野のクリエイターとの新結合も欠かせない要素となるでしょう。社会学者グラノヴェッターが言う「弱い紐帯の強さ(The strength of weak ties)」のような状況の中で、小さなアイデアを実験しつつ深めていき、そこに異分野を含む多様な視点を入れていけることが、このプロジェクトの醍醐味だと考えています。

なので、もし興味がある全国の織物産地の若手織物職人さん、ぜひ一緒にやりませんか? もちろん与謝野町にもぜひ来てもらえると嬉しいです。問い合わせ先は「ひらく織」のページ最下段にあるお問い合わせ先より、お気軽にご相談ください。自分たちが楽しめることを起点にしつつ、少し先の未来を見据えながら、面白いモノを作りましょう!

Shinya Kunihiro

立命館大学卒業後、デザイン事務所にてソーシャルデザインを軸に空間/紙/Webなどのデザイン及び企画設計を担当。2011年ロフトワーク京都へ入社。中〜大規模Webサイトのデザインリニューアルから、地場産業とクリエイティブを掛け合わせて価値を作り出すプロジェクトを得意とする。趣味は山のぼりと野外録音。好きな音楽はピグミーのポリフォニー。2016年8月より渋谷オフィスに異動。

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