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思ったような成果を得られていないWeb担当者にこそ読んでほしい共感の取り込み方

こんにちは、テクニカルディレクターの丹羽です。

周り人に記事を書くよ書くよ、と言いつつ、はや半年は経過しまいましたが、今回「そもそも何のためにサイトを作るのだっけ?」という本質的な側面についてのお話をしてみたいと思います。

サイトの役割とはなんだろう?

サイトを持つということ。

そこには企業としての目的があり、誰かをターゲットとしコンバージョンを定めるということは大切ですよね。

けれども、訪れた人がどんなことを感じ、何を思って去ったのかを考えることはもっと大切ではないかと思うんです。

なぜなら、訪問した人はサイトにある「情報」を通してそこで学び知り、腑に落ちたり気づきを得て次の感情(行動)に繋げていくものだから。

そもそもの話をすれば、僕たちはサイトを訪問するにあたり、検索をしたいわけでもテキストを読みたいわけでもなく、そこにある情報を見たい、知りたい。その欲求に狩られて能動的な行動をし訪問をするに過ぎません。

Adobeが興味深い調査を実施してます。年齢・性別を均等に割った1000人からサンプリングした消費者行動調査2016によると、82.9%の人が「企業のサイトから提供される情報は、自分の関心から遠い」と感じているとのこと。

つまり、何らかの経緯でその情報に接触したものの、自分が期待した内容、コンテキストとは隔たりを感じているのではないかと考えられます。

対面に置き換えるならば、せっかくの貴重な出会い(接点)があったにも関わらず、心象が良くないままお別れをしている状況にあり、何とも残念な状況ですよね。

サイトを検討する時、ついサイトのデザインやUI、機能などの話をしがちですが、本質的には僕らが提供している「情報」に触れた際に、喜びや共感、感動といった何らかのポジティブな感情を抱いてもらえているだろうか、またお帰り頂く際には満足感を持ってもらえているだろうか、ということに尽きるのだと思います。

そのリアクションこそが飲食店で言えば「美味しかったです!また来ますね。」であったり、サイトで言えば、はてなブックマークやPocketに追加、シェアなどであったりします。

何がいいたいのかというとリアルにしろウェブにしろ、そこには常に人がいて、その欲求は何なのか、またその裏の欲求は何なのかという、人と向き合い、人を理解するところに要があるという点は変わりないはずです。

ただリアルでは対面で五感を通して認識できるのに対し、ウェブでは基本的には目と耳だけとなります。また対面よりも心理的ハードルが低い分、リアルほどモチベーションも高くなく、ながら見をしていることも多いですよね。また短時間の接触のため心象にも残りづらいものです。

その一方でメリットもあります。ウェブは24時間いつでもどこからでもアクセスでき、自らの位置情報と連動したり、その時その場所で自分が期待する情報へ容易にアクセスできるということです。

時と場所を選ばず、感情と行動のタイムラグが少なく情報にアクセスできるというメリットはとても大きく、その感情を阻害することなく連続的にするには、 情報に素早くアクセスでき、つまり表示速度もさることながら何度も検索をし直させたり、サイト内に受け皿を持たないということは避けるべきでしょう。

ここまでを整理すると、サイトに訪問する側からすれば、そこに至るまでに何らかの心理的背景があり、その結果として能動的な行動に繋がっているということ。また僕らが提供するサイトは何らかを知ったり判断をするための情報源の一つに過ぎないということを忘れてはならないでしょうし、サイトを提供する側はその期待に応えるよう、一番最初の接点から最後のお別れのとき、またその先に繋がる感情と行動の流れを考えることが欠かせないと感じます。

そうやって人の感情と行動を中心に考えつつ、サイトとリアルでは「従」と「主」、場合によっては「主」と「従」となり、それぞれの場においてどういった役割を持たせ、何があると役に立つか、満足できるか、便利になるのかなどの視点も合わせて考えると、サイトを通して提供できる価値や役割、見せ方も変わるかもしれません。

訪問者から共感を得るにはどうすればいいだろう?

 

例えば、飲食店では通りがかりの人へ魅力的な食を伝えるために、料理はもちろんのこと建物の外観、オープンな厨房、デジタルサイネージ、ライティングや写真などを通してシズル感を感じてもらえるような工夫を凝らしていますよね。僕たちはそれを見て「あぁ美味しそう!食べてみたい!」とか先入観を抱きながらお店に入ったりします。

それにも関わらず期待値がある程度高まりつつ美味しそうな中華に惹かれてお店に入ってみたものの、出てきた回鍋肉、海老チリの見た目が写真とかけ離れてたらガッカリしますよね。

「エビちっちゃ、色も薄っ‥これじゃない」みたいな。例を挙げればキリがありませんがウェブでも同様のことが言えます。

ウェブでは限られた要素(テキスト、画像、動画、音声)を手がかりに僕らは何かを求め、その一環で検索をしたり、知人がシェアしたFacebookの記事を通じて、ちょっとした期待を抱いてサイトに訪問をしたりします。先の飲食店で、もし中華を食べたいにも関わらずピザが目の前に出てきたらどうでしょう?

例え一流店の味だとしても「今はそれじゃない‥」とガッカリするように、その時何を求めているのか、はその人のその時々の感情により異なるように、文脈によっても必要なコンテンツは異なります。

ある角度から見ればそのコンテンツは最適であっても、別の角度から見ると今はその情報じゃない、ましてや企業が企業のために作成したPR情報であれば、訪問する人が期待している情報とは隔たりも大きく、共感するどころではありません。

詰まるところ、その人がどういう経緯でどこへランディングをしようとしていたのか、その逆にサイトを提供する側はどういう意識でどこへランディングさせたいのか、その接点とその時の感情を読み解くことが欠かせないでしょう。

接点を考えてみる

サイトへの接点を考える上で幾つかの経路がありつつ、それらの媒体先にどう展開していくかというのは長くなるのでここでは割愛しますが、最も大きな割合を占め、比較的探してる人の意識も高い経路としては検索エンジンが挙げられます。

この際大手の企業名やブランド名など、 大衆またはその道の人であれば認知も浸透していればその企業名やサービス名で検索行動を取るわけですが、知名度の低い中小企業や新規サービスや概念、または何らかの目的のための解決策を探している場合など、サイトのトップページからサイトに訪問することはまずありません。

より汎用的で一般的な語句で検索をする、または具体的な何かが定まっていない場合、より抽象度の高い語句で検索をします。その最にいくつかの検索クエリに分解できますが、ここで大事なことはその語句における関連性、相対的優位性が高ければ、何かを探し求めている人との接触するタイミングが増え、単純接触効果として接する時間や機会が増えると認知や好意的感情を持ってもらえる機会が増えるということです。

そのわずかな瞬間にどうその情報の魅力を伝えるか、またその際のその人の意識は何を思っているのか、運がよく訪問はして頂けたとして、その瞬時に伝えるべき情報とは何かを考えなくてはなりません。

行動経済学者のダニエル・カーネマン曰く、人は意思決定にあたり人間の脳には二つの思考プロセスがあり、自動的に高速で動き直感的にそれが何なのかを判断するシステム1と、その後にやってくる論理的思考を備えているシステム2というものに分類できるとのこと。

つまり接触する瞬間、直感的にそこには自分が求めている情報が存在するのか、またランディングした直後に、そこには見る価値があるのかを僕たちは瞬時に判断していたりします。

ということは何かを探し求めて訪問した人に対し、その結論が冒頭で端的にまとまっており、その人が無意識のうちに感じている「ここにあるかな‥ないかな‥」という不安に対し「ここには受け皿があるよ!」と安心をさせてあげることが大切です。

ですのでいくらファストビュー以下で延々と何らかの魅力を伝えようとしても、そもそもそれは読まれるだろう、読んでくれるだろうという前提で成り立つものなので、何より最初にどういう意識で何を求めているのかという接触点を、前後の点と点を線として理解をすることは欠かせません。

言葉を選ばず誤解を恐れずに言うのであれば、僕らはサイトが重たいからといって訪問しないわけではありません。ディズニーや美術館、有名なラーメン店など、長蛇の列でも僕らはそこに求めるものがあれば1時間でも待って並びます。

リニューアルもされておらずデザインが古く文字も小さい、スマホ対応をしてなくても訪問しないこともありません。机の幅も狭く椅子も小さく座りづらいラーメン店でも僕らは好んでそこに座ります。

つまり、一度商品やサービス、コンテンツそのものに対して価値を見出すことができたのならば、僕らは何度だって訪問するし、ブックマークして読み返すこともあり、他者への共感を求めるのであれば拡散やレビューなどの自発的なポジティブの連鎖が起こります。

だからといって周辺をないがしろにしてはいけないものの、サイトの中心にあるのは常に人とその感情であるということを忘れてはならないように思います。

そう考えるとリニューアルからただ古いページはそのまま反映すればいい、企業が載せたい情報だから載せる、なんとなくコンバージョンを定める、サイトを作ること自体がゴールとなる、などコンテンツとそのコンテンツへのアプローチの設計に配慮がされていない状況があるとすれば、せっかくの魅力を伝えられず、Adobeの調査のように「企業のサイトから提供される情報は、自分の関心から遠い」を体現してしまっているかもしれません。

何よりせっかくの労力なので報われたら嬉しいものですし、少しでも見る人にとって価値を感じてもらえる情報は積み重ねるごとに信頼へと繋がり、企業イメージ、ブランディングへと繫がります。

昨今フェイクニュースやキュレーションサイト、EC決済問題を始めとする様々なトラブルが相次ぎ、ウェブ全体の信頼を揺るがす出来事が多い中だからこそ、より信頼性も高くLTV(life time value)を見据えた設計が求められているように感じられます。

最後までお読み頂きありがとうございます! 

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丹羽 孝彰 丹羽 孝彰

構築・運用など多くのWordPressサイト制作を経た後、2012年ロフトワーク入社。フロントエンドの技術的な側面や、前職SEO会社での経験を活かしたサイト改善提案のサポートなどを担当。